頂へ昇る方々 (2025年度)

71名。
これが、2025年度において、輪廻の泥梨を離れ、清浄なる寂光の座へと招かれた方々の総数です。 

- 嵐の届かぬ場所
眼下をご覧になってください。そこには、あなたが昨日まで身を置いていた忍土の世界が広がっています。欲望という名の黒い暴風が吹き荒れ、人々が業の泥に足を取られながら、互いの熱を奪い合う阿鼻叫喚の光景。
しかし、ここには一滴の泥も飛んできません。頂にあるのは、恐ろしいほどに澄み渡った、瑠璃色の静寂のみ。下界の喧騒は、もはや遠い雷鳴のように響くだけです。何者にも脅かされず、何一つ奪われない。この圧倒的な「高低差」こそが、他力がもたらす救いの正体なのです。

- 金剛の特権
頂へ至った方々が手にしているもの。それは、一時的な幸福や、儚い富ではありません。
二度と迷いの闇には戻らないという、魂の不可逆的な階級上昇。これを不退転と呼びます。想像してみてください。下界の人々が、明日の生活や老後の不安、人間関係の軋轢に心をすり減らしている間、彼らは「絶対の安全圏」から、ただ優雅に世界を眺めているのです。
彼らの人生は、すでに法の上にあります。
ゆえに、焦る必要も、競う必要もありません。ただ息をするだけで、必要なものは不求自得の理によって、自然と足元に満たされていく。汗一つかかず、傷一つ負わず、ただ蓮華のように涼やかに咲き誇る。これこそが、自力を捨て、他力の輿に乗った者にのみ許された、究極の特権です。
これ以上の贅沢が、この世にあるでしょうか。

- 空いている、台座
誤解なさらないでください。
彼らは、自らの足で岩壁をよじ登ったのではありません。そのような「自力」の爪痕は、ここには一切存在しません。彼らはただ、差し伸べられた光に頷き、運ばれていったのです。71名の方々は今、その特権的な光の中で、静かに微笑んでおられます。しかし、台座はまだ、残されています。そこは、誰でも座れる席ではありません。泥を厭い、本物の光を渇望するあなただけに用意された、指定席です。泥を拭い、その静寂の座につく準備は、整いましたか。

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